「看病用心鈔」 お寺の出前の会による平成版私訳 第1条から第2条

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「看病用心鈔」 お寺の出前の会による平成版私訳

訳 大崎信久 絵 宮本直樹 お寺の出前の会 刊

 医療はだれのためにあるのか。福祉はだれのためにあるのか。
 そして、宗教は……。

看病用心鈔

仏法僧編集部からのご案内

 病院や介護施設などを手製の屋台を曳いて訪れ、紙芝居やハーモニカを活用して、聞く人にとって優しい講演会を開いている「お寺の出前の会」の1号庵・宮本直樹師、2号庵・大崎信久師のおふたりは、鎌倉時代の高僧・良忠上人(浄土宗)が記した『看病用心鈔』を現代語に訳され、平成13年に上梓されました。お寺の出前の会ではハーモニカを担当されている大崎師が訳を、紙芝居を担当されている宮本師が挿絵を描かれました。

 同書は、「医療はだれのためにあるのか。福祉はだれのためにあるのか。そして、宗教は……。」という大きな問いに一石を投じるもので、病人を看護する人にとって必要な、最期の瞬間までの心構えや接し方を、仏教に基づいてまとめています。おふたりの承諾を得て、同書を全文掲載いたします。

仏法僧編集部からの注釈

 宮本師の挿絵について、一言、解説させていただきます。学校教育などで美術を習った人が同師の作品をご覧になられたら、デフォルメされたデザインや色の多様さに、違和感を覚えるかもしれません。しかし、この絵には、私たちが見落としがちな、大切な意味があります。

 ちょうど、街中の点字ブロックをめぐる論議と同じことなのですが、「黄色いブロックは目立ちすぎる」ということをおっしゃる方が居られます。視力を失った人にとっては、ブロックは何色であっても良い。視力を保っている人にとっては景観に合った目立たない色が良い。という論です。この論には、欠陥があります。弱視の人にとっても使い勝手が良いように、点字ブロックの存在を目立たせるために黄色が選ばれた。ということへの配慮がありません。近年、見かけることが多くなりましたが、石材の灰色に溶け込んで良く似合う、あのステンレス製点字ブロックは、だれのためにあるのでしょうか?

 視力が低下した人にとっては、一般的な美術の感覚で作られた絵は「見えにくい。分かりにくい」ことが往々にしてあります。宮本師の作品は、医療、福祉の現場で生まれ、現場で試行錯誤を繰り返し、育てられたもので、視力の弱い人にも物語が伝わるようにとの願いが込められています。

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はじめに

 

みなさま、はじめまして。私は良忠と申します。これからみなさまを『看病用心鈔』の世界へと、ご案内したいと存じます。


みなさま、はじめまして。私は良忠と申します
これからみなさまを『看病用心鈔』の世界へと、ご案内したいと存じます。

 佛教とご縁を結ばれ、そして看病に携わる方々に敬って申し上げます。
 私たちが極楽浄土(様々な苦しみに煩わされることのない世界)に往生(往きて生まれる)するということは、最も大切な因縁(使命・つとめ)でございます。 もしここで病人に、看病人のやさしいおもいやりや励まし、導きがなかったら、この最も大切な「往きて生れる」ということは到底出来ないでありましょう。
 ですから、病人となった時は看病してくださる方を慈悲ある御佛のように思い、また、看病人は子を思うような親心をもって、お側(そば)にいてさしあげるべきでありましょう。
 この鈔では、知識ある看病人は、病人の心の動きをしっかりと把握できるようお努めになって、発病(とくに死に至る病)より命終わらんとする最期の日までの間の、看病人としての心得ておくべき事柄を記し申し上げます。

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第1条 病室の設え(しつらえ)

 


病人:佛さま、どうか私を見捨てないでください。
佛さま:よし、わかった。その手を離すでないぞ。

 1 病人の部屋は日常生活の場とは別の所に設けるのがよいでしょう。もしできないときは、日常生活の場を病人のために改善したらよいでしょう。
 2 病人が寝ながらにしてご本尊を拝める位置に安置し、そのご本尊の手と病人の手を5色(青・黄・赤・白・黒)の幡(ばん・糸)で結び付けてください。そして、臨終間際になれば、ご本尊と病人との間をより狭めて、親しく身近に感じられるようにしてさしあげてください。

 ◆お寺の出前の会のつぶやき→5色の糸、それはいつも佛さまに看護られ、いざというとき導かれる、つながりの証し。→病人に適した過ごしやすい環境について、良忠上人の時代に、既に考えられていました。→ホスピス→バリア・フリー→ユニバーサル・デザイン。

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第2条 病人を取り巻く環境

 

病人:よい薫り、この落ち着いた雰囲気。安心だなあ。ムニャムニャ…。


病人:よい薫り、この落ち着いた雰囲気。安心だなあ。ムニャムニャ…。
看病人:私もなんだか安心よ。ムニャムニャ…。

 1 病室は常に清潔さを保ち、花などを飾り、ときにはお香を焚くなどして明るく落ち着いた雰囲気作りが必要です。ですから、あまり病人の心を刺激するようなものは避けてください。
 2 看病人も時間をみはからって交替に休息することも必要です。その際、病状が軽いからといって、おろそかにしてはなりません。
  人の命が終わるのは、ほんの一瞬のことなので眼を離さないようにしてください。休息するときも病人の息が聞こえるぐらいの所にいて、あまり離れないようになさってください。
  夜になると病状が急変することがありますので、病人の顔色が確認出来るようにしてください。また、暗がりの中でもご本尊を拝めるようにご配慮ください。

 ◆つぶやき→無理せず、あせらず、気を抜かず。→燃え尽き症候群にご用心!

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