テンプルステイ 韓国・日本 未来へ向けた共同プロジェクト

アジアをつなぐ仏教。国際交流のススメ

開催日 2004年1月5日から10日まで

真の隣国関係を取り戻すための歩み

 

 韓国と日本は歴史的、文化的にも密接な関係を有しています。にもかかわらず、長きにわたり「近くて遠い国」と形容される関係が続いてきました。2002年サッカー・ワールドカップの日本、韓国の共同開催が決まると、金大中大統領(当時)は「日本文化の開放」を促し、韓国と日本が急接近しはじめました。

写真/左上 ソウルの空港での出迎え。左中 歓迎の宴。 左下 事前に韓国の歴史や言葉を学ぶ。右 ソウルの宿。

写真左上 ソウルの空港での出迎え。左中 歓迎の宴。 左下 事前に韓国の歴史や言葉を学ぶ。右 ソウルの宿。

韓・日の未来へ向けたプロジェクト

 

 両国の共同開催でサッカー・ワールドカップは成功裡に幕をおろしました。この歴史的な快挙は、多くの人に、民間レベルでの文化交流を促進させることが将来、両国間において重要な意味をもつであろうことを、再確認させることにもなりました。文化交流を促進させようと、韓国文化観光部は、21世紀を担う韓国と日本の青少年の交流と友好親善を目的とした「2003年 韓国・日本 未来へ向けた共同プロジェクト」を、大韓佛教曹渓宗が設立した社団法人Paramita(パーラミータ)青少年協会とともに立ち上げました。

 

曹渓宗が設立した青少年育成団体

 

 曹渓宗は宗門関係学校の経営をはじめ、子ども、青少年組織や職場職能別信徒、寺別信徒組織などを組織し、お釈迦様の教えを学ぶとともに多様な社会活動を展開しています。こうした組織の一つとして「社団法人Paramita(パーラミータ)青少年協会」(元澤会長)も存在しています。1996年6月に曹渓宗の文化体育部から独立し、社団法人として登録されました。2001年6月の時点で、全国に7支部、12の支会、1万5000人余の会員を擁する一大組織になりました。韓国には、28の各教団に所属する社団法人がありますが、今回のプロジェクトのように、韓国政府からの直接の支援を受けて活動できるのは、ソウル市内ではこの協会だけで、今回の場合、日本から参加した学生やスタッフは、すべて韓国側の招待。韓国政府が21世紀を担う両国の若者にかけた期待の大きさを知らされる出来事でした。

写真/左上・右上 韓国と日本の青少年が寝食を共にしたテンプルステイの甲寺。 下 大雄殿前での記念写真。

写真左上・右上 韓国と日本の青少年が寝食を共にしたテンプルステイの甲寺。  大雄殿前での記念写真。

韓国の熱い期待に応えた牛尾管長

 

 2003年11月末に、韓国の佛教新聞社から今回のプロジェクトについての相談を受け、まず相談したのが、正法事門法華宗総本山妙法寺の牛尾日秀管長でした。管長はこれまでにスリランカ、タイ、インドなどの仏教徒との親交を深めておられ、ご自身は『釈迦仏教に帰れ』などの著書で、現代こそ精神文化の立て直しが必要と強調されておられます。
韓国との事前打ち合わせの時間も無く、内容も煮詰まっていない相談でしたが、牛尾管長は「やりましょう」の一言。その力強い言葉に勇気付けられて現地との打ち合わせが始まったのが12月5日過ぎ。その後1週間余で、参加する研修団員20人がそろったのでした。

写真左 甲寺の長谷住持の法話。右上 日本側代表・正法事門法華宗の岐部康博氏の挨拶。右下 入寺式のワンシーン。

写真左 甲寺の長谷住持の法話。右上 日本側代表・正法事門法華宗の岐部康博氏の挨拶。右下 入寺式のワンシーン。

曹渓宗の文化を学ぶ日本の若者たち

 

 今回の研修日程は2004年1月5日から10日までの5泊6日。5日に福岡からソウル入りし、市内の家庭的な雰囲気の料理店で歓迎のオリエンテーションが開かれました。6日から7日の午前中までは瑞山磨崖三尊仏、普願寺祉、修徳寺、博物館、王陵など日本文化に大きな影響を与えた百済文化の拠点を探訪しました。
7日午後から9日早朝までは「テンプル・ステイ」。つまり、寺院に宿泊して僧侶と同じ生活を体験しました。研修寺院は公州市の国立公園鶏龍山にある甲寺(カプサ・長谷住持)で、ソウル市内の高校、大学に通う韓国人学生20人と寝食をともにしました。甲寺は420年に創建された古刹で、山内には大雄殿(本堂)をはじめ講堂など10をこえる堂宇が甍を垂れ、曹渓宗の伝統的な禅を伝えています。山中の坂道を30分ほど登ると、韓国の学生達が「アンニョハセヨ(こんにちは)」と出迎えてくれました。私たち引率スタッフは研修団員と甲寺に預ける立場ですから、この場で韓国の学生のパートナーに引継ぎます。韓国の学生たちは、こうした「テンプル・ステイ」の経験者ばかりで、日本の団員達に対してリーダーシップをとってくれ、その不安を解消する態度を示してくれていました。

 

大雄殿での入寺式

 

 大雄殿で長谷住持を導師に、入寺(開講)式が営まれました。式に当たってオレンジ色の作務衣に着替えた若者たちには、韓国も日本もありません。そこには、仏の弟子としての存在があるだけでした。五体投地の礼拝と般若心経の読誦の後、長谷住持は「ひとつの因縁が帰結するのに500年の歳月を要することを考えると、今日、ここでみんなが出会うことの因は、いつ起きたのでしょう。幾重にも重なり合った因縁により、釈尊の御前に、今、韓日の青少年が集まっている。この時を、この日を忘れず、未来のためにこの親善を成功させてほしい」との法話をされました。

写真/右上 五体投地。 左上・中 拓本の講習とその作品。下 参禅の様子。

写真右上 五体投地。 左上・中 拓本の講習とその作品。 参禅の様子。

寺院での2泊3日の研修

 

 入寺式を終えると寺院の生活が始まりました。夕方の勤行に参列し、参禅や「バル」という朝食の作法を学んで翌朝に備えます。8日午前3時から大雄殿での朝の勤行に参拝。続いて4時から5時まで座禅指導があり、5時からは一汁一菜の「バル」という朝食供養。無言で4つの器「応量器(鉢)」を使って食事をします。最後に鉢を洗った水を飲むという作法は、飽食の時代に育った現代人にあらためて食の意味を考えさせる良い機会になりました。その後、まだ暗い山内を往復約1時間をかけて別のお堂に参拝。この日は茶道や「貧女の一灯」の心を学ぶ蓮燈作り、拓本などの講習を受けました。

写真/左 元澤会長に蓮燈作りの手ほどきを受ける。右上 講習のワンシーン。右下 山内散策。

写真左 元澤会長に蓮燈作りの手ほどきを受ける。右上 講習のワンシーン。右下 山内散策。

時間では量れない連帯感

 

 9日午前6時には大雄殿で閉校式が営まれ、長谷住持の見送りを受けて暗闇の中を下山。韓国の学生たちとはここでお別れですが、暗闇の中でパートナーと抱擁しあう人、目頭をハンカチで押さえながらしっかりと握手する人など、別れを惜しむ様々な光景がありました。2泊3日と言っても、実質的に生活をともにしたのはまる1日と少しの時間だけ。
しかし、この別れの光景には、時間、国、民族、言葉などでは量れない人間のぬくもりがありました。ソウル市内では、今回のプロジェクトの発端となったワールドカップの競技場などを見学して、パーラミータ青少年協会の元澤会長ら現地スタッフとお別れの食事会を開きました。日本の団員たちがハングルで自己紹介をすると、元澤会長ほかスタッフの目にも熱いものが。翌10日朝、韓国の学生たちが、写真を収めたCDを空港まで持参、見送りをしてくれました。若者たちが固く握手する姿を見ながら、アジアの未来を拓く彼らに夢と希望を感じました。

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